求人票が業務の羅列になるのは「9割が同じで、1割が違う」からです
求人票づくりが重く感じる理由は、量が多いわりに頭を使わない部分が大半を占めることにあります。同じ会社の求人なら、書く内容のほとんどは職種が変わっても共通です。
- 会社の理念と事業内容
- 社風
- 勤務地、勤務時間、休日
- 福利厚生
- 選考フロー
- 人材紹介会社(エージェント)への伝達事項
一方で、求人ごとに本当に変わるのは、ごく一部です。私たちが人材紹介の現場で整理してきた範囲では、次の5つに集約されます。
- 求人タイトル
- 職種(メインの分類1つと、隣接するサブ分類)
- 給与形態と月給、想定年収、年収例
- 応募時の必須条件
- どんな人なら内定の可能性が高いか
ところが入力フォームは、1件作るたびに全項目を埋める作りになっています。似た求人を10件作れば、共通部分を9回繰り返すことになります。そこで消耗してしまい、肝心の1割を考える時間が残りません。
私たちは人材紹介会社として、面談実績4,000名以上を少人数の体制で回してきました。求人票づくりの重さは、紹介する側でも採用する側でも同じ構造で起きています。
候補者と人材紹介会社が読むのは、業務内容ではなく「誰が評価されるか」です
候補者は求人票を読むとき、業務の一覧ではなく、自分の経験が評価されるかどうかを探しています。私たちが面談で使っている翻訳の順番は、次のとおりです。
- 経験した業務
- 評価される職能
- 求人で刺さる入口
- 入社後に染み出せる方向
求人票は、この順番を逆からたどると書けます。この仕事で評価される職能は何か、どんな経験が入口になるか、入社後にどの領域へ広がれるか。この3つが書かれていると、人材紹介会社も候補者に説明しやすくなります。
例えば採用担当の求人で、スカウト送信や日程調整を並べるだけでは差が出ません。エンジニア採用やハイレイヤー採用といった難易度、採用広報や採用Ops、オンボーディングまで関わるのかを書くと、人事としての次を考えている方に届きます。
「人事募集」という広い書き方も避けたいところです。人事は採用、労務、制度企画、人材開発、組織開発、現場支援に分かれます。どこを任せたいのかを決めないと、来てほしい方にも、合わない方にも届かない求人票になります。
求人票の言葉は、組織のゴールが決めています
組織の言葉は、ビジョン、規則、社内の会話、契約書、顧客に見せる資料の積み重ねでできています。求人票もその一部です。言葉が書き換わると、組織の見え方そのものが変わっていきます。
そして、組織の言葉を決めているのは組織のゴールです。ゴールの解像度が上がらないまま、きれいな言い回しだけを足しても中身は変わりません。求人票を直す前に、この採用で何を進めたいのかを決める必要があります。
もう一つ大事なのは、言葉の定義を揃えることです。「裁量」「スピード感」「成長できる環境」は、会社ごとに意味が違います。自社ではその言葉をどういう意味で使うのかを、短く、誤解のない表現にしておきます。
ただし、ゴールを言葉にしすぎると、かえって伝わらなくなります。求人票にすべてを書き切ろうとせず、面接で話す部分を残しておく方が自然です。
Claude Codeに任せる範囲と、人事・現場が担う範囲を分ける
Claude Codeは、日本語の指示でファイルや資料を扱える、Anthropic社のAIツールです。採用ページや既存の求人票を材料に、下書きを形にするところまでは任せられます。一方で、組織のゴールと入社後の役割は、人が決めるしかありません。
| 作業 | Claude Codeに任せる部分 | 人事・現場が担う部分 |
|---|---|---|
| 共通情報の整理 | 理念、事業内容、勤務条件、選考フローを資料から項目ごとに抜き出す | 内容が事実か、最新かを確認する |
| 職種ごとの書き分け | メイン分類と隣接するサブ分類の候補、タイトル案を複数出す | どの分類で募集するかを決める |
| 求める人物像 | ヒアリングメモから評価される職能と入口になる経験の案を並べる | 入社後の本当の役割とゴールを言葉にする |
| 給与・必須条件 | 既存求人票からの転記と、表記ゆれの統一 | 金額と条件の最終確認 |
| 文章の整え | 長い文の分割、重複の削除、用語の統一 | 自社らしい言い回しかどうかの判断 |
AIが出した下書きは、人が事実確認と修正をしてから、候補者や人材紹介会社に渡します。給与、条件、制度の名称は特に取り違えが起きやすい箇所です。
判断そのものは渡しません。この求人でどのゴールを進めるのかは、経営、現場、人事の三者で決める話です。AIに決めさせると、どの会社でも通用する平均的な文章に落ち着いてしまいます。
求人票の下書きを整える5つのステップ
- 材料を1か所に集めます。自社の採用ページ、既存の求人票、現場ヒアリングのメモ、評価制度の資料をフォルダにまとめます。
- 共通部分のひな形を1枚つくります。理念、事業内容、社風、勤務地、勤務時間、休日、福利厚生、選考フロー、人材紹介会社への伝達事項まで。ここが9割です。
- 職種ごとの1割を埋めます。タイトル、職種分類、給与、必須条件、内定の可能性が高い人の5項目です。材料にない項目は空欄のまま出させます。
- 現場マネージャーに「入社後1年で何が変わっていてほしいか」を聞き、役割の記述に反映します。ここは人の仕事として残します。
- 人事が事実確認をし、言葉の定義を揃えて確定します。公開後は、応募の様子や人材紹介会社からの質問を見て、1割の部分だけを直します。
空欄が多く残るときは、文章の問題ではありません。採用要件がまだ固まっていないサインとして扱います。経営が要件を言葉にできていない状態で求人票だけを磨いても、選考の途中で判断が揺れます。
指示の出し方で押さえる3つの原則
原則1:材料の出どころを指定し、書かれていないことは「ない」と書かせる
「このフォルダの資料だけを使ってください」「資料にない項目は(要確認)と書いてください」と先に伝えます。推測で埋めさせないことが、確認の手間を減らす一番の近道です。
原則2:9割と1割を分けて頼む
共通のひな形づくりと、職種ごとの差分づくりは別の依頼にします。一度に頼むと、共通部分に引きずられて、職種ごとの違いがぼやけた文章になります。
原則3:出力の形をこちらで決める
項目名と並び順を先に渡します。業務内容、評価される職能、入口になる経験、入社後に染み出せる方向、必須条件、歓迎条件という形です。形が揃うと、職種間の比較も修正も速くなります。
求人票づくりでつまずきやすい4つの型
型1:業務の羅列を、そのまま読みやすい文章にして終わる
整った文章にはなりますが、誰に向けた求人かは変わりません。評価される職能と入社後の役割を足さない限り、反応は変わらないと考えておきます。
型2:職種を広く書いて、対象をぼかしてしまう
「人事」「企画」のような広い募集は、応募の幅を広げるようで、実際には誰にも刺さりません。メインの分類を1つ決め、隣接するサブ分類を添える形にします。
型3:魅力づけを盛って、入社後の実態とずれる
「人事が複数名います」と書いても、採用の責任が一人に集中していれば入社後に気づかれます。人数ではなく、経営が採用要件を明確にしているか、現場マネージャーが面接や定着に関わるか、オンボーディング担当が決まっているかを書きます。
型4:全職種を一度に仕上げようとして止まる
数十職種を同時に整えようとすると、結局どれも公開されません。求人票が出ていない職種は、候補者に提案すらされない状態が続きます。主要な職種から順に出して、公開後に直す前提で進めます。
よくあるご質問
採用ページがまだ整っていない会社でも使えますか
使えますが、材料が少ないほどAIが埋められる範囲は狭くなります。まずは既存の求人票1件と、現場ヒアリングのメモだけを材料にしてみてください。出てきた下書きの空欄が、そのまま現場や経営に聞くべき項目になります。採用ページの整備は、その確認が終わってからで間に合います。
現場にヒアリングする時間が取れません。短縮できますか
下書きを先に用意し、「違うところを直してください」と渡す形にすると、現場の負担は下がります。ゼロから聞くより、修正してもらう方が короткое時間で済みます。ただし「入社後1年で何が変わっていてほしいか」だけは、現場マネージャー本人から聞いてください。ここを採用担当が一人で巻き取ると、入社後のずれが起きやすくなります。
Claude Codeでなければできない作業ですか
この記事の手順自体は、ツールの名前に依存しません。目的、社内のセキュリティ方針、利用環境に合わせて選ぶのが現実的です。私たちは自社の人材紹介業務でClaude Codeを使っていますが、環境に合わせて使い分けることもあります。どの社内資料をAIに渡してよいかの社内ルールを、先に決めておくことをおすすめします。
まとめ
求人票づくりは、9割の共通部分と1割の差分に分けると見通しがよくなります。共通部分の整理と下書きはClaude Codeに任せ、評価される職能、入社後の役割、組織のゴールは人事と現場が言葉にする。この線引きが、業務の羅列から抜け出すための土台になります。
注意したいのは、言葉を整えるだけでは中身が変わらないことです。採用要件が固まっていないまま文章を磨いても、選考の途中で判断が揺れます。下書きの空欄は、現場と経営に確認すべき項目として扱ってください。AIの出力は、人が事実確認と修正をしてから外に出します。
まずは、主要な1職種の求人票を材料に、共通部分のひな形を1枚つくるところから始めてみてください。進め方をまとめて学びたい場合は、人材紹介向けClaude Code研修の内容も参考になります。
